礼儀を尽くして酒を飲む

酒が、お酒が、好きである。

わたしの実家は昔から梅酒を毎年漬けており、父が毎日お酒を飲むこともあって幼い頃から「お酒」というものが親しみやすい環境だったのだ。親族たちがお正月に集まればみんなで楽しそうにお酒を飲んでいるのが、幼心にとても羨ましかったのをよく覚えている。未成年立ち入り禁止のお酒というものはとても魅力的に見えた。その思いは今もずっと続いている。

さて現実で「お酒が好きです」と言い切ってしまうと、言い切られたほうは一瞬面食らってしまうのが普通のようだ。世間は飲酒=悪習慣という図式を持っている。健康への被害、不注意の事故、アルハラ云々。内科医も歯科医も飲酒の習慣はほどほどにと釘を刺すのが普通だ。本人が健康を損なうだけならまだいいが、周りに迷惑をかけられてはたまらない。わたしも小さな頃酔っぱらった父に散々絡まれ大迷惑を被っていた一人であるのでよくわかる。

飲酒が悪習慣として見られるのも仕方ないことだとは理解できる。しかし、しかしだ、酒好きを公言している身としては「毎日飲むの?」だとか「ヒロコさんは飲兵衛だから」等と茶化されると腑に落ちない心地がしてしまう。わたしはお酒が好きで、愛していると言っても良い程の人間だ。誰かとお酒を楽しむ瞬間や一人で家でリラックスして飲む瞬間を特別大切にしている。なので毎日飲むような勿体ないことは出来ない。月に数回がベストだと思っている。飲兵衛と言われたら否定はできないが、わたしは酒への礼儀をわきまえた飲兵衛だ。一気飲みや酒に溺れ過ぎて周囲に迷惑をかける行為は酒に失礼な恥ずかしいことだと思っている。ヤケ酒も苦手だ。つらいときに安易に酒へ手を伸ばすとこんなときに逃げ道に使ってごめんよと思ってしまう。お酒が好きだからこそ、お酒には紳士的な態度で接していたいのだ。

とはいえまだまだ未熟者。ひどく酔っぱらってしまい二日酔いになってから後悔する日もたまにある。それにわたしは消化器系があまり強くなさそうなのでそこも考慮していかなきゃならない。あと50年くらいは生きていたいので健康にも関心がある。酒と付き合い続けるためには努力が必要。それもこれもお酒のためならと思ってしまう。

次はなにを飲もうか、なんて考える幸せな瞬間に、子ども時代のお酒への憧れが続いているのを実感するのだ。