トラウマだった映画を見返す

今年やりきったこと、乗り越えたことのひとつとして映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を実に十年ぶりくらいに観たのが個人的に心に残っている。

とても有名な映画なので観たことのある方も多いと思う。わたしの通っている中学校では自習の時間にこの映画を教室で流していたことさえあった。ユダヤ系イタリア人の親子の、戦時下でのなんとも心に残る温かくて切ない映画だ。

これを初めて観たのは確か小学生の頃だ。家族の誰かがレンタルショップで借りてきたものだった。幼い頃なので難しい話は分からなかったが、主人公グイドのユーモア溢れる人柄に多いに笑わされた。どんな真面目そうな状況でも楽しませてくれる面白い映画だなとだけ思っているのである。これは完全にグイドの息子、ジョズエと同じことを感じ取っていたのだと今になって思う。

そして暫く時が経ち、高校生になったわたしはこの映画をまた観る機会に巡り合えた。昔大好きだった面白い映画をまた観たくなったのである。観はじめてみると小さな頃には気づけなかった散りばめられたユーモアを再発見出来てまた多いに楽しめた。嗚呼やはり素敵な映画だ、と思いながら見続けていくと物語は後半へ移っていくのである。幸か不幸かわたしには主人公一家の巻き込まれていた事情が全て分かってしまう年齢になっていた。戦争、収容所。もうジョズエと同じ視点では観れないことに気が付いた。主人公グイドがあんなにはりきって家族を笑わせてくれていた理由も深く理解することが出来た。高校生のわたしは猛烈に泣いた。

これまでレンタルショップでライフ・イズ・ビューティフルの文字を見ると決まって切なさに目をそらしてしまっていた。自分の中では素敵な映画であることに違いなかったが、思い出すと悲しい気持ちでいっぱいになり耐えきれる自信がなかったのである。

それから10年程時は経ち今年、ふと目についたその映画を勇気を出してまた観ることに成功した。可笑しくて、切なくて、10年前とは違った発見がまだまだあった。今回は後半のシーンでもなんとか泣かずに観ることが出来た。主人公がつらい状況でも家族を笑わせてくれていた最大の理由、大きな愛を感じ取ることが出来たからだと思う。

心にずっと引っかかっている映画は案外誰にでもある。過去によく理解出来ぬまま観てしまい、わけもわからずトラウマのような感情を持ち「二度と観るものか」と誓ってしまった映画があるという人もいるだろう。又はわたしのように小さな頃には楽しんで観れたはずが、年を重ねるにつれてストーリーの深さを知り怖くなってしまう場合もある。

もしその映画のことを考えると胸が痛むような思いがしても、長年気になってしまい実は観たくて仕方ないのだと気づいたなら思い切って観ることをおすすめしたい。気になるということは、きっとそこに自分の求めている何かがあるのだ。

勿論、たかが映画鑑賞といってもデリケートな問題なので無理は禁物。相手は手ごわいと思うならお酒や一緒に観てくれる友人の力を借りるのも手だ。もしどうしても勇気が出ないとしたら未来のもっと成長した自分に託してもいい。

ちなみにわたしの姉は名作「ダンサーインザダーク」を久しぶりに見返したくて仕方ないらしい。わたしもこの映画を前には逃げ出したくなる、が、姉からの吉報を待ちたい。

 

ライフ・イズ・ビューティフル [DVD]

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