ロリータ、自分を信じて歩くこと
付き合いの長い友達には「本当に私服が落ち着いたね」としみじみ言われることがある。
何を隠そう、昔のわたしはロリータファッションが大好きだったのだ。
電車内で一瞬コスプレかと思ってしまうようなフリフリヒラヒラな女の子を見てギョッとしたことのある方も多いだろう。
カジュアルとは程遠い、あまりに現実離れしたロリータファッションのインパクトはかなり強い。
はい、わたしも5年前まではギョッとさせる側でした。
「ロリータ」と聞いてまず思い出すような甘ロリ(下妻物語の主人公桃子的な)よりも、おとなしめなデザインで上品なクラシカルロリータなファッションが大好きだった。
お気に入りはVictorian maiden。
スカートはやや長め、ニーソックスよりタイツのスタイルが好きだった。
自分的にはおとなしめのファッションでいたつもりだけれど、まぁ街を歩いていれば浮いてしまう。
お年寄りはあからさまにじろじろ見てくる、女の子は睨んでくる、お若い男子グループときたら無言でにやにや。
家を一歩出たら敵ばかりの世界だ。
そんな中電車に乗り学食にもドトールにも出没していた。
あんな恥ずかしい恰好で冷たい視線を受けて果たしてつらくはないのか?
勿論つらいに決まっている。
人より派手な格好をしていてもわたしは平凡な女子の心をずっと持っていた。
見ず知らずの通行人からはっきり悪意に満ちた笑みを見せられ傷つかない人なんていないわけがない。
それでも心から「かわいい!!」と自信を持って言えるドレスが護ってくれたのだ。
「本当はオムライスを食べたいけどみんながランチセットしか見てないから同じものにするの…」なんて人がいたら誰だって「好きなもの頼めばいいのに」と思ってしまうだろう。
わたしもそう思う。
周囲から冷たい反応を受けたとしても、自分だけの問題ならば自分の大好きなものを信じればいいのだ。
ブランド物にお金をかけるも良し、占い師通いを続けるも良し、ピアスは開けない主義でも良し。
なににお金や力をつぎ込もうが基本的には個人の自由。
「あなたのためを思って」なんてにやにや笑いつつ自分のことしか考えていない人のことは無視してよろしい。
気に入らないからといって人に批判されるいわれはないのだ。
今ロリータ服を脱いだわたしはあの頃と違いショートパンツもジーンズも履けるようになった。
電車に乗ったとしてももはや誰も恐る恐る見てきたりはしない、本当にただの一般人。
昔と変わらないのは、自分の一番素敵だと思えるファッションを今も楽しんでいることだ。
ロリータ時代のドレスは一番のお気に入りのものだけは捨てずに大事にとってある。
自分が一番素敵だと思えるものを信じ、一緒に歩いたわたし達は立派な戦友だ。